家が地震で被害を受けた際のチェックポイントとその対処法
近年、全国各地で地震が頻発しています。去る1月22日も大分県・宮崎県で最大震度5強を記録し、一時騒然としました。深夜でしたから、スマホの警報で飛び起きた人も多いのではないでしょうか?
翌23日、カワノにはメールや電話でたくさんのお問い合わせがありました。そのほとんどが、
「外壁にひびが入った」
「サッシがずれた」
「瓦が落ちた」等の被害報告。
カワノが定期的にポスティングしている耐震関連のチラシを見て、「ここならなんとかしてくれるかも」と考えて下さったようです。
そこでこれまでにリクエストの多かった「家が地震被害を受けた際の対処法」、そして「そもそも地震被害を最小限にするためにはどうすればいいのか」について、ここでご紹介したいと思います。
日本に住んでいる限り、地震は決して他人ごとではありません。まずは“知ること”から始めてみましょう。
地震被害を受けた家を修繕する前に、知っておきたい2つのこと
地震直後、家の被害を目の当たりにするとパニックになってしまうことも少なくありません。間違った判断をしないように、まずは以下の2点をしっかり頭に入れておきましょう。
①被害箇所だけを修繕しても、根本的な解決にはならない
家は地震の揺れにより、さまざまなダメージを受けます。
目視で分かるのは
- 外壁のひび割れ
- タイルのひび割れ
- 剥落
- 塗装のひび割れ
- 瓦の落下
- 瓦のズレ
- 基礎のひび割れ
- 窓枠の歪み 等です。
地震による家の被害を確認したら、皆さんはどうしますか?多くの場合
地元の業者等に被害箇所の修繕を依頼
↓
被害箇所(外壁のひびならひびのみ)を修繕して終了
このような手順を踏む方が多いと思います。しかし、部分的な修繕では根本的な解決にならない場合がほとんどです。
実はその前に、なぜ、地震(揺れ)で、家の “この箇所” に被害が出たのか?をしっかり考える必要があるのです。
私たちは具合が悪くなると、病院へ行き、いろいろ検査しますよね?目の痛みの原因が脳にあったり、腰痛で受診したら内臓疾患が発覚したり、、。見た目では分からない病気が見つかることも少なくはありません。
家も同じです。外壁の小さなひび割れの原因を追求すると、「家の倒壊につながりかねない重大な瑕疵が見つかった」というようなことが良くあります。
家全体が揺れたのに、特定の箇所にだけ被害が出るのは、何らかの原因がある場合が圧倒的に多いのです。
私たちも現場を見て、「ここに被害が出た(=負担がかかった)のは、もしかしたらあそこの傷みが原因かも?」と考えることが頻繁にあります。
瑕疵に気づかないまま、見た目だけをキレイに修繕するのは危険です。
見た目はキレイに整えられても、見えない部分に瑕疵を抱えたままですから、次の地震ではもっと大きな被害が出るかもしれません。地震が起きなくても、瑕疵部分が崩れ、大事故につながる可能性もあります。
地震後、被害箇所を修繕する際は、「見た目をキレイにすること」だけではなく、「なぜその箇所が被害を受けたのか原因を探り、その原因を根本から改善すること」が必要であると覚えておいてください。
②被害箇所を放置するのは厳禁
次に、地震で家にダメージを受けても「このくらいの被害なら大丈夫」と、自己判断で被害箇所を放置する方がいますが、これも絶対にNGです。
例えばひび割れ。
ひび割れは、浅いひびに見えても、深部までダメージを受けている場合が少なくありません。ひび割れは家の大敵である雨漏りの原因となり、家の寿命を大幅に縮めます。
さらに、雨漏りによって発生する湿気は、シロアリの大好物です。別途詳しくお話しする予定ですが、シロアリは非常に厄介です。一度発生すると家の木部(柱や梁)を食べ尽くし、ボロボロ、スカスカにします。悪食ですから、コンクリートを食べることさえあります。
家を支える部分がボロボロ、スカスカになれば、当然、耐震性能は大幅に低下します。
「地震の被害を受けたら、一度専門業者にみてもらう」これは鉄則と覚えておいて良いでしょう。
地震後の家の6つのチェックポイント
マンションの場合は、まず管理組合へ相談して下さい。
戸建ての場合は、下記を参考にしてみてください。
①建物周辺の土
湿りやぬかるみがある
- 給水管などが破損して水漏れを起こしている可能性があります。
②トイ
ずれたり、外れたりしている
- 外壁のひび割れと相まって、雨漏りの大きな原因になります。
③外壁
変形、膨らみがある
- 建物が傾いている可能性があります。
④ひび割れ
- ひび割れは放っておくと雨漏りの原因になります。
- なぜそこに過剰な力がかかったのか調べる必要があります。
- タイルの目地のひび割れは後々落下する危険があります。
- マンション等で、コンクリートに直接壁紙を貼った壁のひび割れが複数世帯で見られた場合、早急な調査が必要です。
- マンションの場合、共用部分の廊下・壁・天井もチェックしましょう。
⑤室内
壁面にひび割れがある
- 室内の壁面に発生するひび割れもどこに起因しているか調べる必要があります。
窓が開けにくい
- 窓の不具合だけでなく、建物そのものが変形している可能性もあります。
⑥床
湿っぽい
- 要注意。給水管や排水管から水漏れしている可能性があります。
地震被害を受けた家を修繕する際の対処方法
地震被害を受けた家を修繕する際の、一般的な手順は以下です。
- 家の被害状況をチェックする
- 被害状況を踏まえた上で、専門業者に相談する
業者の選び方は非常に重要です。後半でご紹介する「家の修繕や改修、中古住宅探しをする際の業者選び方」を参考して下さい
- なぜ今回、その箇所に被害が発生したのかを調査します
状況に応じて耐震診断を受け、家の状況を確認しましょう。 重大な瑕疵が見つかる場合があります。
- 調査の結果を受け、必要な箇所を改修します
耐震改修をすると補助金や税優遇が利用できます。詳しくはコチラをご覧下さい
- 揺れない家、地震に強い家に生まれ変わります!
地震被害から家を守るために自分たちで出来ること
「地震でダメージを受けた箇所から重大な瑕疵が見つかることがある」とご説明しましたが、実は、そういう箇所は普段から「ここ、危ないよ〜」というサインを出しているケースが少なくありません。
日頃から家の状態をチェックするクセをつけておけば、そのサインに気づくことができます。地震が起こる前に家の瑕疵を発見・修繕することが、地震被害から家を守ることにつながります。
①家周りをこまめに掃除する
「え、そんなことで!?」と思うかもしれませんが、掃除は非常に大切です。家周りをこまめに掃除する習慣があれば、壁のひび割れや雨漏りの筋、トイのズレ等、家の瑕疵に気づきやすくなります。
②家周りに物を置かないようにする
置いた物によって、基礎のひび割れ等、家の重大な瑕疵が隠れてしまうことがあります。
また、物を置くことで出来る日陰は、耐震性能を著しく低下させる家の大敵・シロアリにとって快適な環境です。日陰を作ることがシロアリの侵入経路を増やすことにつながるのです。特に、基礎の近く、換気口の側はシロアリの侵入経路になりやすいので、できるだけ何も置かないようにしましょう。
③家の耐震性能について調べる=防災意識を高める
時間がある時に家の耐震性能について調べてみましょう。難しいことをする必要はありません。今はインターネットで検索するだけですぐに情報が手に入ります。
- こういうひび割れは危険なんだ
- 耐震性能を上げるために軽い瓦があるんだ
- 家の点検口ってどこにあるんだろう
最初はこの程度で良いのです。
調べ始めると、どんどん興味が出て、もっと調べたくなると思います。そうすると、「何もしないこと」「何も知らないこと」がいかに危険であるか、自然と理解できるようになるはずです。
実際、カワノにも「最近、家のことが色々気になるようになって」と、10年以上前の耐震診断のチラシを持って来店された方がいました。それも一人や二人ではありません。
近年頻発する地震を不安に思い、ご自分で色々調べた結果、耐震診断の必要性に気づいたのです。
セルフ点検のススメ
定期的にセルフ点検をしましょう。普段の掃除では気づくことができない家の瑕疵を見つけることができます。
以下のリンク先に国が定める安心・安全な家「長期優良住宅」を認定するためのチェックリストがあります。
全てチェックするのは大変ですから、気になる部分を少し見るだけでも構いません。ぜひ参考にして下さい。
平成31年度長期優良住宅化リフォーム推進事業
現況検査チェックシート:genkyoukensa_chekku_ws_h31 PDFファイル(223KB)
地震に強い家を手に入れるための重要ポイント:家の修繕やリフォーム、中古住宅探しをする際の業者の選び方
これまでお話ししてきたように、地震の揺れが家に与えるダメージは深刻です。場合によってはご自分やご家族の命が危険にさらされることもあります。もちろん、修繕費用も高額です。
一番いいのは、「地震被害を受けにくい家=耐震性能の高い家」にすることです。
お住まいの家の耐震性能を上げる場合も、耐震性能の高い中古住宅を購入する場合も、大切なのが業者選び。最低でも以下の2点をクリアしているところが望ましいです。
①家の点検・調査(インスペクション・耐震診断)を提案してくれる
家の点検・調査は長く安全・快適に暮らすために必要不可欠です。
国も従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目指し、「長期優良住宅=長く住むための対策(耐震改修など)を施した家」を推奨しています。
そのため、中古住宅の仲介を行う業者には、インスペクション(建物現状調査)の告知が義務付けられているのですが、実際に告知を行っている不動産業者は滅多にいません。
通常の不動産業者は「物件を受け渡すこと」が仕事ですから、利益に結びつかない+αの仕事(=業務外の仕事)に手を煩わせたくないのです。受け渡し後のトラブルも補償対象外にしているところがほとんどです。
しかし、カワノのように「物件の提案→点検・調査→補助金提案→改修工事→アフターフォロー」までをワンストップで行う業者は、そういう訳にはいきません。
改修工事も含めて全ての工程を自社で行うため、事前の点検・調査は“絶対”です。中身を知らない物件の改修やフォローは出来ませんから。
もちろん、過去の経験から、
- 家の状態を調べることがどれだけ重要か
- その工程を省くことがどれだけ危険か、どれだけお客様に不利益を生むか
- インスペクションや耐震診断が国の補助金や税優遇の要件の一つであること
等を熟知しています。
カワノが目指す「大分県にお住まいの方々の住環境の向上」、「お客様との信頼関係の構築=小手先だけのお付き合いではなく、長くいい関係を築く」ためにも欠かせないものであると考えています。
だからこそ“点検・調査しない”という選択肢はないのです。
耐震診断・耐震改修
カワノを病院に例えると
通常の不動産業者:「物件の受け渡し」に特化したまちの専門医院
カワノ:さまざまな分野の専門医が在籍する総合病院
です。
どちらが良い、悪い(インスペクションの告知義務を怠るのは悪いですが)ということではありませんが、事業テリトリーが異なるため、業務内容・業務に対する意識に違いがあることは知っておく必要があります。
大切なのは「しっかりと知識を付け、ご自分の求めと合致する業者を選ぶこと」です。
ちなみに、不動産雑誌に掲載されている中古物件にはそれぞれ不動産会社の名前が書かれていますが、それは「売主」についている不動産会社です。売主のために、少しでも早くと契約を進めることもあります。
「買い手」もその不動産会社にお願いしないといけないと勘違いする方も多いのですが、実は好きな業者に頼むことができます。第三者の視点でアドバイスしてくれる別の業者に頼むのも1つの方法です。
カワノの不動産
②適切な耐震改修を提案・施工できる
耐震改修には技術や知識が必要です。実績のあるところを選びましょう。
例えば、現在は、家の耐震性能を上げるために軽い屋根材が推奨されています。
通常、防災瓦等をご提案し、壁とのバランスを考えた上で半分程度の重さにするのですが、知識のない業者は、130kg→120kgといった微細な軽量化で「軽くしたので安心です」と伝えるようなことが多々あります。正直、意味がありません。
この場合、国が定める基準に満たないので、補助金も利用できません。
「値段もあまり変わらないし、防災瓦より普通の瓦の方が重厚感・高級感があっていい」というお客様のご要望に押し切られて、壁に見合わない(壁が支えきれない)重い瓦を乗せ、耐震性能を落としてしまうことすらあります。
専門知識のないお客様はほとんどの場合、「危険な提案」「危険な施工」に気づくことができないと思います。
だからこそ、
- どのくらいの実績があるか
- どのような案件を手がけているのか
等を一つの目安にして、依頼する前に“どのような業者か”しっかり調べるようにしましょう。
さいごに
今回は家が地震被害を受けた際の対処法をご紹介しました。
- 被害箇所だけを修繕しても根本的な解決にはならない場合が多い
- 被害箇所の放置はNG
この2つを頭に入れて、正しい手順で調査、修繕をすることが大切です。
ベストなのは地震に強い家にして被害を最小限に止めることです。
3年、5年、10年点検等の定期的なメンテナンスをしっかり行い、必要であれば耐震改修も視野に入れましょう。
家は適切なメンテナンスを行えば、通常30年程度が建て替えの目安だと思われている木造、軽量鉄骨住宅も60年程度安全に住むことができます。
「メンテナンスにはお金がかかるし」と躊躇する人も多いのですが、
- メンテナンスを怠った結果、家の寿命が縮む=建て替え、住み替え
- 大規模修繕が必要になる=高額出費
等を考えれば、経済的にも断然お得だと分かるはずです。
もちろん、これから中古住宅の購入をお考えの方は、デザイン性だけでなく、耐震性能も考慮する必要があります。
特に以下の1981年5月以前に建てられた住宅は1度耐震診断を行うことをおすすめします。
備えあれば、憂いなし。耐震性能の高い家を手に入れることが何よりの地震対策です。