耐震改修がもたらすメリットとは?(前編)
「耐震改修」という言葉だけを見ると字のごとく「地震に強い家に改修すること」と想像します。
地震大国日本では、地震に強く、安全で安心な住まいであることが一番大事なポイントになりますが、「耐震改修」は、それだけに留まらない多くのメリットを生み出します。
ここでは「耐震改修」を行うことでもたらされるさまざまなメリットや効果について、当社が施工した事例と合わせながら、ご紹介したいと思います。
1.日々の生活に安心感が生まれる
耐震改修を行う最大のメリットは、やはり「安心な我が家に住まうことができる」ということではないでしょうか。
地震の際に建物の損壊を抑えることができ、被害が最小限で済むという点が最大のメリットだとお考えの方も多いと思います。
平成28年に発生した熊本地震の際には、大分県内でも多くの被害を出しました。地震の被害が多かった別府市内での事例ですが、同じ地区で建物損壊の被害が出たにも関わらず、当社が耐震改修を行なっていた家は煉瓦が数カ所ずれる程度の被害で済みました。
この経験を通じ「耐震改修」を行うことで、いかに日々の生活に安心感が生まれるかを実感しました。
地震に強い家とはいえ、実際のところは「耐震改修」では、建物への被害を完全に抑えることは残念ながらできません。
しかし、耐震改修を行うことで、地震発生時に建物が瞬時に倒壊し、住んでいる人を危険にさらす可能性を抑え、安全に脱出する時間を稼ぐことができます。
まずは住人の「命」を守ること…。これは「耐震改修」の最大のメリットだと言っても過言ではないでしょう。
耐震改修事例①「耐震改修住宅」と「無改修住宅」
2.住宅の揺れが軽減される
耐震に取り組む当社への問い合わせでよくあるのが「住宅の揺れを軽減してほしい」というご依頼です。
この際におすすめしているのは「外付けホールダウン金物」という施工です。
「外付けホールダウン金物」とは、基礎や土台、柱を緊結するもので、外壁に取り付けるタイプですので、外壁を切らずに施工することが可能なため、短時間で工事が終わり、コストを抑えることができます。
阪神大震災の甚大な住宅被害があった中でも、間口が狭い木造3階建て住宅の被害は軽微な範囲にとどまっています。これは、木造3階建て住宅に構造計算が義務つけられており、特に2階3階の床が剛床仕様で、必要な柱(特に角柱)にホールダウン金物(内付け)が取り付けられていたことが、被害が軽減できた要因だと考えられています。
当社で施工した案件の中には、トラックが通ったり、山から吹き下す冬場の風で揺れていた家が、ホールダウン金物を取り付けた後に揺れがおさまったという事例もあります。
詳しくは施工例をご覧いただき参考にしてください。
耐震改修事例④「外付けホールダウン金物」の取り付け
3.60歳以上の対象者の場合「高齢者向け返済特例」の利用で月々の返済額が抑えられる
高齢になるとローンを組むことが難しくなり、家のリフォームなどを行うことに躊躇してしまいます。
しかし、耐震改修・またはバリアフリー工事を含むリフォームを行うと、満60歳以上の高齢者を対象に保証人なしで自宅などを担保にしてリフォーム資金を借りることができる「高齢者向け返済特例」という制度を利用することができます。
申し込みには認定資格者(リフォームカウンセラー)、高齢者住宅財団、住宅金融支援機構のいずれかによるカウンセリングを受ける必要がありますが、高齢者にとっては生活資金を取り崩さずにリフォーム資金を獲得できるという大きなメリットがあります。
耐震改修事例②「高齢者向け返済特例」活用リフォーム
4.耐震診断・耐震改修の補助金制度を受けることができる
耐震改修を実施したいと思っても「費用がかかってしまうのでは?」と考えてしまうのが正直なところ…。しかし、耐震改修を行う際には補助金制度が利用でき、コスト面でのメリットもあります。
国土交通省の発表では、2020年に耐震化率95パーセントという目標を掲げていましたが、その目標を5年間スライドし、2025年までに達成するよう時期を延期しています。
このような現状を見ても、まだまだ耐震改修に対する意識が一般的に浸透していないのがわかりますが、国はこれまで以上に地方の行政に対し、耐震化を進めるよう求めています。
大分市では、平成20年度(2008年)から耐震診断・耐震改修の補助金制度を開始していますが、利用件数は12年間で耐震診断1000件以上、耐震改修は228件(令和2年3月末現在、大分市情報開示請求にて確認)となっています。
この耐震改修件数のうち、101件は当社が施工しており、その際は、耐震改修の補助金があることを積極的にお知らせし、お客様に活用していただいています。
補助金が利用できるのは、昭和56年5月31日以前に着工された3階建て以下の木造住宅であることが条件です。
昭和56年の建築基準法施行令改正前の旧耐震基準による建物は、地震に対する抵抗力が弱く、地震の際、倒壊などの損傷を受ける危険性が大きいと考えられ、耐震性の確保が急がれるところです。
該当する住宅の場合は、ぜひ耐震改修を行うことをお勧めします。
大分市の耐震診断・耐震改修の補助金に関するサイト
https://www.city.oita.oita.jp/o172/kurashi/anshinanzen/mokutai.html
5.耐震改修でさまざまな「税の優遇制度」を受けることができる
耐震改修を行うと、さまざまな減税を受けることができます。
①所得税額の控除
昭和56年5月31日以前の旧耐震基準で建築された木造住宅を、現行の耐震基準に合わせる耐震改修を行った場合が対象となります。
他に、バリアフリー、省エネ、同居対応、長期優良住宅化(耐久性向上)の一定要件を満たすリフォームも対象になります。
いずれも2021年12月31日までに工事完了・入居する人が対象で、工事の翌年の3月15日までに税務署への確定申告が必要です。
所得税から「標準的な工事費用相当額から補助金などを除いた額の10パーセント」または「控除限度額25万円のいずれか少ない額」が控除されます。
②住宅の固定資産税が半額に
一定の要件を満たす耐震改修を行うと、家にかかる固定資産税についても減額を受けることができます。
2020年3月31日までに完了する、税込50万円以上の耐震改修工事が対象となり、改修工事をした翌年の家屋にかかる固定資産税の2分の1が減額されます。
工事完了から3ヶ月以内の申請が必要で、届け先は各市町村となります。
③住宅ローンの減税が受けられる
返済期間10年以上のリフォームローンなどを借りて行う、一定の要件を満たすリフォームが対象となります。
「リフォーム工事費用は補助金などを除き100万円以上」「リフォームする住宅の占有面積が50㎡以上」などの条件がありますが、各年の住宅ローン年末残高の1%が所得税から控除されます。
減税期間は、改修後に入居した年から10年間です。
耐震改修事例⑦「2世帯同居に伴う相続時精算課税制度・耐震改修・ 住宅ローン控除の活用」
まとめ
築年数が経過している住宅にお住まいの方は、家の倒壊を心配しながら不安な毎日を過ごされているかもしれません。
まずは家の築年数を調べ、昭和56年以前に着工の木造建築であれば、耐震診断を受け、地震に対する住宅の強度が不十分だと判明した場合は、家の耐震補強を早急に進めましょう。
そこでやはりネックとなってくるのがコスト面。
「お金がかかりそうだから…」というイメージがあり改修工事に踏み切れていないという方もいらしゃるかもしれませんが、耐震改修を行うことで、補助金や減税の制度を利用できるため、費用面での心配も払拭されるのではないでしょうか?
今回ご紹介した内容の他にも、まだまだ耐震改修を行うと得られるメリットがたくさんあります。次回も後編としてお伝えしていきたいと思います。
※6~10は下記をご覧ください。
お知らせ
一般社団法人高齢者住宅財団が発行する「財団ニュース」に寄稿させていただきました。
http://www.koujuuzai.or.jp/publications/foundation_news/
特集 安心できる住まいのリフォーム
『耐震改修がもたらす有効性とその実例紹介』
~安心安全だけではない、精度の利活用による様々なメリットや効果について~
※以下よりダウンロードしてご覧いただけます。