耐震改修事例⑦「2世帯同居に伴う相続時精算課税制度・耐震改修・ 住宅ローン控除の活用」
この事例は、親所有の家に息子家族が同居するにあたり、生前贈与・耐震改修・住宅ローン控除を活用した例になります。
自己所有の住宅に独り住まいのお客様(以後J様)は、当社が行った大規模リノベーション現場の隣に住んでおり、工事期間中からご自分の家もリノベーションしたいという意向を、当社工事担当に持ちかけて頂いていました。
正式にお話を聞きにお伺いしたところ、近くに住む息子夫婦も同席しており、同居する意向があるということでした。
資金面に関しては、J様の自己資金と息子の住宅ローンで準備するつもりでした。
ただ、当初はJ様の名義のまま息子が住宅ローンを組む予定でしたので、このケースだと親子間贈与になる旨をお伝えしました。ローン額相当が息子からJ様への贈与となり、贈与税が発生することになります。
そこで生前贈与を行い、土地・建物の名義をJ様から息子へ変更することになりました。しかし、今度はJ様から息子への贈与になるため、やはり贈与税が発生することになります。
贈与税を払う資金は準備できないこともあり、今回は「相続時精算課税制度」を利用する提案をしました。
この制度は、今回の贈与を相続時に先延ばしし、相続税の基礎控除額から今回の贈与額を差し引く制度です。注意する点は、相続時に先延ばしするため、いざ相続の時に基礎控除額が差し引かれた為に相続税がかかっては意味がありません。
J様については相続時にも問題ないことがわかりましたので、この制度を利用することになりました。
また、息子夫婦からは、今回の計画で住宅ローン控除を受けたいという要望がありました。昭和56年以前の建物のため、住宅ローン控除を受けるためには息子の名義であることと、耐震改修を行い「耐震基準適合証明書」の発行が必要です。
住宅ローン控除を受けるためにも、土地・建物を息子名義に変更する必要があり、さらに耐震改修工事を行うことが必須でした。
今回のケースは、「相続時精算課税制度」を利用し、お客様の負担の少ない贈与を行い、耐震改修工事をすることにより、安心できる強い家と住宅ローン控除を受けられるという、お客様にも大変喜ばれた好例です。
「相続時清算課税制度」の概要
相続時精算課税制度 | 暦年課税(暦年贈与) | |
---|---|---|
適用要件 | 60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対して財産を贈与する場合のみ(年齢は贈与年の1月1日で判断) | 特になし 親子間、親族間以外にも、第三者からの贈与にも適用できる |
非課税限度額 | 贈与者1人につき、2,500万円まで | 受贈者1人につき、1年間で110万円まで |
贈与税の計算 | (譲り受けた財産の合計金額-特別控除2,500万円)×一律20% | (1年間で譲り受けた財産の合計金額-基礎控除110万円)×税率(10%~55%) |
申告手続き | 贈与税が0円(非課税枠内)でも申告が必要 | 贈与税が0円(非課税枠内)の場合は申告不要 |
相続時の加算 | 譲り受けた財産を贈与時の時価で相続財産に加算する | 相続時の加算はなし ただし、受贈者が相続人等の場合、相続開始3年以内に譲り受けた財産は、相続財産に加算する |
メリット | 価値の上昇が見込める住宅や土地などの財産を贈与することで、相続税の負担軽減につながる | 贈与した財産は相続税の課税対象とならないため、生前に贈与することで相続財産が減り、相続税の負担軽減につながる |
デメリット | 住宅や土地などの財産を贈与する場合、不動産取得税や登録免許税など、贈与税以外の税金がかかる | 非課税枠が小さい |
お知らせ
一般社団法人高齢者住宅財団が発行する「財団ニュース」に寄稿させていただきました。
http://www.koujuuzai.or.jp/publications/foundation_news/
特集 安心できる住まいのリフォーム
『耐震改修がもたらす有効性とその実例紹介』
~安心安全だけではない、精度の利活用による様々なメリットや効果について~
※以下よりダウンロードしてご覧いただけます。